同級生に影響を与えた生徒の話し

あの人は何故あんな行動を?宗教を通して学んだ人の心の話。

仏教系幼稚園出身のいとこ

これは私のいとこである翔子の学生時代のお話です。

翔子は普通の家庭の一人っ子として育ちました。

幼稚園の頃、翔子は仏教系の幼稚園に通っていました。

翔子の家は特別信心深いとか、そういうわけではありません。

お正月には近所の神社に初詣に行ったり、お盆にお寺にある先祖のお墓に行ったり、クリスマスにはツリーを飾ってサンタさんが来るのを待っていたり……、どこにでもいるような典型的な日本人。

仏教系の幼稚園に通っていたのも、ただ家の近くにあったからという理由でした。

園長先生は優しそうな高齢のお坊さん。

毎朝園長先生は仏教のお話を幼稚園児でも分かるように面白おかしく話してくれて、翔子はそれがいつも楽しみだったそうです。

その幼稚園では、「お父さんやお母さん、周りの人たちに常に感謝を忘れないこと。」と毎日教えていました。

そのおかげか、この幼稚園の子たちは皆とても行儀がよく、近所の人たちに大きな声で挨拶したりボランティアでゴミ拾いをしている姿が評判だったそうです。

公立学校で出会う様々な人たち

小学校と中学校は地元の公立学校に通った翔子。

同じ幼稚園からの子もいれば初めて会う子も多くて性格も様々。

当然少しやんちゃ目な子もいたことから、一年生の頃から翔子はかなり戸惑ったそうです。

わざと嫌がることをしてくる男の子。トゲのある言い方をしてくる女の子。

「皆に優しく感謝の心を持ちましょう。」

そう教えられてきた翔子にとって、そういう嫌なことをしてくる行動が理解できませんでした。

しかし翔子はそれでクラスメイトを嫌いになることはありませんでした。

もう一つ幼稚園で教わったこと……。

「その人が今何を思っているかを考えて行動しましょう。」

人の気持ちを考えて、自分にできることは何か考えようということ。

きっとあのクラスメイト達も何か理由があるはずだと考え、翔子は理解しようと努力しました。

すると、そのクラスメイト達は友達と喧嘩したり、親とあまり話をしていなくてかまって欲しかったこと、誰かに自分の気持ちを知ってほしかったことなどが分かったのです。

この頃から翔子は人の気持ちを考える癖が自然とついていて、それに気づいた周りの人たちからは“とても思いやりのある優しい子”と評価されていました。

キリスト教系の高校へ

進路選択では、翔子は私立の高校を受験することにしました。

当時そこまで進路の選択肢も多くなく、翔子が選んだのはキリスト教系の女子高。

制服が可愛くて人気のある学生の憧れの高校でした。

キリスト教徒じゃないと入れないということもないらしく、翔子の家は一応仏教徒。

生徒の7割くらいは他宗教もしくは無宗教の家だそうで、そこで初めて聖書やロザリオ(十字架)に触れる生徒がほとんどだそうです。

 

幼稚園の頃に毎朝聞いていたお坊さんのお経がシスターのお祈りに変わり、持ち物は数珠からロザリオに変わり……。

宗教ってこんなに雰囲気違うんだなぁと、翔子は新鮮に感じていました。

しかし変わらないこともありました。

それは幼稚園でずっと教えてもらっていたこと。

「皆に優しく感謝の心を持ちましょう。」

翔子は、どんなに見た目雰囲気や信仰の対象が変わっても、生きていく中で大切な教えは仏教もキリスト教も変わらないことに気づきました。

人は一人で生きていくことはできない。

だからこそ、どんな宗教でも相手への思いやりの心、助け合いの精神は変わらないんだと気づいたのです。

人の心を知る

翔子の通っていた高校は大学の付属校で、成績上位者はエスカレーター式に大学へ進学することができました。

翔子はその大学で心理学を学びたいと思うようになり、学校の勉強、特に国語と英語には力を入れていたようです。

その後大学へ進学することができた翔子は、現在は臨床心理士の資格を取得し、スクールカウンセラーとして活動しています。

 

現代社会は大人だけでなく子供も多様なストレスにさらされ、心を病んでいく子たちも多いようです。

そしてその多くの原因は人間関係。

ストレスの多いこの現代で、心の余裕がなくなることによる攻撃性の負の連鎖。

翔子は一人でも多く、ストレスに潰されない考え方や自分を見つめ相手を思いやることの大切さを広められればいいなと言っていました。

生きていくうえでストレスを完全にゼロにすることはできないでしょう。

しかし、一人一人が相手を思いやり考えて行動することで、少しは生きやすい世の中になっていくのかもしれません。

翔子はそれを宗教を通じて感じたようです。

 

kiako著

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