就 職
20代で初めて就職したのが、とあるビルメンテナンス会社。
私が所属する部署は警備部であり、施設警備員として勤務することになった。
入社式に集まった年齢層を見て驚愕。自分の父親と同年代の方しか集まっていないではないか。20代は1人もおらず、居ても40代が若干名。ほとんど50~60代が中心だった。
『入社式の部屋を間違えたか?!』と疑心暗鬼になったのを今でも覚えている。
右も左もわからない中で、席に座った隣の人と敬語で話す。相手も20代の若造が何故こんな会社に入っているのかと思ったことだろう。
周囲との距離感を感じながら仕事をしていくのに、初日からやり辛さを感じた。
業務指示
初めて配属されたのは商業施設。警備業のイロハをその現場で叩き込まれてはや1年。
会社から“施設警備業務2級”の検定を受けるように指示を受けた。
そのころは、会社が検定保持者を増やしたくて躍起になっていたので、私だけではなく何人か選任して受講させていた。
業務もある程度出来るようになって、仕事へのやりがいを感じていたので、更なるレベルアップを図れると内心意気込んでいた。
施設警備業務2級
会社が申し込んだのは、警備員特別講習事業センターが主催する特別講習。ここで学科と実技試験をパスすれば、晴れて資格を取得できるわけだ。
試験申込の都合かわからないが、みな開催地が近場の東京で受講できるのに私だけ埼玉県。
片道2時間近く掛かり、「何でだっ!!!」と申込みをした会社の上司に悪態をついた。当然ながら、上司に当たり散らしても何も解決はせず、やり場のない不公平感を味わっていた。
「こうなったら絶対に受かってやる!」気持ちを切り替えて、検定合格への闘志をメラメラと燃やした。
講習の内容は一言でいえば、ロボットになりきるということだ。実技も学科も暗記。ひたすら詰め込んで、復習して自分の物にするしかない。
学科は、会社で学んだ内容と被る部分があったので助かったが、問題は実技である。
負傷者の搬送要領、出入管理要領、警戒じょうの操作要領、自動火災報知設備操作要領、警察機関通報要領などがあるが、どれもこれも違和感。
確かに普段の業務で傷病者の119番通報、出入管理での接客対応や自動火災報知設備は触るが、警備隊独自のやり方で統一していた。しかし、求められているのは、検定が定めた文言と動作である。
『2級に相応しいレベルに達しているか見極めを図るために、みんな同じ要領で統一させているのだろうな』と考えるが、そもそも警戒じょうなど触ったことがない。
警戒じょう
長細い硬い木の棒である。中国拳法の棒術の棒をイメージしてもらえるとわかりやすい。
屋外にある広い空き地まで移動して、周囲との距離を取り整列。
まずは基本姿勢から始まり、本手の構え、逆手の構え。続いて、本手打ちや逆手打ちを「えいっ!」という掛け声と共に行う。
全員で同じ動作をしていることから、高校時代の剣道の授業を思い起こさせた。
教官からは、じょう先の高さや目線の位置など事細かな指摘を受けて、内心はこう思っていた。
『実際役に立たないわ!職場にないもん。』
その後も、教官の檄が飛ぶ中「えいっ!」「えいっ!」とひたすらじょうを打ち込む。
全てが終わった頃には、みなゼイゼイと息も絶え絶えになっていたが、少しは様になったと思われた。
出入管理、自火報要領
イメージは、YouTubeに出回っている全国チェッカーコンテスト。
シュッ!シュッ!とキレのある動作と、暗記した文言を述べていく。まさにロボットが演技しているかの如し。
台詞を間違うと、ストーリーが成り立たなくなるので、受講者は一言一句間違わないよう真剣に練習。講習だけでは覚えきれないので、自宅に帰り一人で声を出しながら復習をする。
当時は実家に住んでいたので、家族からは奇怪な目で見られて、飼っていたウサギは距離を取りコチラの様子を伺っていた(ごめんな)。
検 定
心配していた警戒じょうは、習った通りの動作を開始。
途中、動作の要領が正しいのか間違っているのか不安に駆られたものの、「ええいままよ」ヤケクソでやり通した。周囲よりも「えいっ!」が大きな声を出せたから大丈夫だろうと自分に言い聞かせて次の要領へ。
出入管理も自動火災報知設備も、自宅で声が枯れるほど練習した甲斐あってか、台詞が口をついて出るわ出るわ。
手ごたえを十二分に感じて試験を終えた。
その後
結果的に施設警備員2級の検定を見事合格。数年後に1級の検定も合格することができた。
当時勤めていた会社では1級保持者は私しか居なかったので、少し誇り高い気分であった。
直属の上司からは、「検定に合格することは素晴らしいことだけど、資格を取って終わりではない。その資格をどう活かすかを考えなさい。」と教えられた。
確かに資格を取ったからといって、持っているだけでは、ただの紙切れ。
それからは、会社で同僚や後輩の指導教育をする機会があれば、率先して志願。
人に教える事は、”教えるための技術”が必要であることを学んだ。
資格取得を機に、少しだけ広い視野を持てたと思う。
187著
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