私の高校受験の思い出は、あまり良いものではない。
そもそも受験というものに良い思い出のある人はあまりいないだろうが、私自身もそうだった。でも勉強が大変だとか、成績が上がらないとか、そういった苦しさではない。
私にとっての苦しさは、周りからの悪意のないプレッシャーだった。しかしこれも多くの人が思うようなプレッシャーとは少し違うかもしれない。
今でも思い出すと、自分の中でぐるぐるとした思いがあふれだす。そして思う。
あの時周りに流されず、自分で道を選んでよかったと。
辛い日々の始まり
当時中学生だった私は、塾に通っていた事もあり成績が良かった。科目にもよるが上位10名以内には必ず入っているくらいで秀才というほどではないけれど、まあ、賢い方だったと思う。
中学3年生になり高校受験を控えた年になって、どこの高校を受験するか担任の先生と面談をする事になった。
私の住んでいた地域にはほとんどの人が行くA高校と、進学校で特進クラスもあるB高校があった。
私はA高校を希望しており、理由はA高校に昔からずっと憧れだった部活があったからだった。
特進科も考えはしたがそこは本当に賢い所で、後の大学受験でもほとんどの人が東大や京大を考えるような場所だった。自分自身そこまでの学力はないし、将来目指しているものもまだなかった。
面談の時、先生にA高校を希望していると伝えると渋い顔をして、「お前ならもっと上も目指せると思うぞ」と言われたが、それでも希望は変えなかった。
この時は、「まあ、教師ならもっと上を目指しなさいと言うだろうな」と深く考えていなかったが、ここからが周りからのプレッシャーとの戦いだった。
プレッシャー
最初はやっぱり、担任を始めとする教師からの圧だった。定期的に行われる面談では必ずと言っていいほどB高校をすすめられた。
それだけならまだしも他の先生達にも話が行っていたらしく、廊下ですれ違う先生に「B高校に行った方が将来の幅が広がるぞ」とか、「B高校のパンフレットを渡すから少しでも考えてみないか」と話しかけられた。
急に放課後呼び出されたかと思えば、B高校の特進科を受ける人達の講習会に無理やり参加させられたりと、学校に行くのが嫌になる程だった。
その次は友人からの圧だった。最初は普通だったのに受験が近づいてピリピリしていく中で、それは変わっていった。
同じA高校を目指す友人からは、「賢いんだからA高校を目指すのはやめて。合格枠が減るじゃん」と言われ、
B高校を目指している友人からは、「私より賢いのにどうしてA高校を目指すの。楽しないでよ」と詰られた。
ちゃんと理由があって選んでいる自分の選択を否定される事は、とても辛いものだった。
押しつぶされていく自分
今思うと、教師陣たちの言葉は私を思っての言葉だったと思う。上に行く能力があるのにそれをしない事は甘えだと言われてもおかしくはないし、正しい判断ではない。
友人たちの言葉も今ならわかる。余裕がないなかで簡単な道を選ぶ私が友人たちからどのように映ったか、想像に難くない。
それでも私は、自分なりの思いがあってA高校を選んでいた。必死に勉強してB高校に入り勉強まみれの日々を過ごすよりは、憧れの部活のあるA高校で高校生活を楽しみたかった。
先の考えていない馬鹿な判断だったのかもしれないが、自分で決めた選択だった。
そしてそれを周りから全否定される事は、本当に辛い事だった。
たとえ他のより良い道があったとしても、自分のやりたい事をする方が大切である。そうは思っていてもここまで否定されると気持ちも揺らぎ、自分がすべて間違っている気がした。
そう思えば思うほど悲しくて、自分で選択する事が怖くなった。
母の言葉
そうして、自分の意見よりも周りの意見に流され何も考えなくなりかけた時、私を支えてくれたのは母だった。
みんなが自分の考えを押し付けて来るなかで、母だけは何も言わなかった。
私がA高校を希望している事を伝えた時も、「ふーん、家から近い方ね」と私の希望を否定も肯定もしなかった。
ただ私が周りの言葉に流されかけた時、「自分の決めた事をやりなさい。周りに流されるのはダサいわよ」と、笑いながら言った。
その言葉を聞いてから、私の気持ちは揺らがなくなった。今まであれだけ周りからいろいろな事を言われても、変えなかったこの気持ちは自分にとって間違っていない。そう信じた。
そして、周りに何か言われても、自分の気持ちをしっかり伝えるようにした。どうしてA高校に行きたいのか、その理由をはっきり伝えるようにしていると、次第に先生も友達も何も言わなくなった。
自分の気持ちが彼らに届いたのだと思うと本当に嬉しくて、そこからやっと私は受験勉強に専念できるようになったのだった。
自分の選んだ道
あれから数年が経ち、今でも当時の辛い思いは忘れられない。
しかし私は今もA高校を選んだ事を後悔していないし、A高校を選んだおかげで憧れの部活に入部し、とても楽しい3年間を過ごす事が出来た。
周りの意見を聞いて、将来の事を考えた道を選ぶべきだったと多くの人は言うかもしれない。
たとえそうであったとしても、
自分で選んだ道を進む事が出来た事は、自分自身にとってとても価値のあるものだったと今でも思っている。
nefhdsofgj著
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