出会いと受験への決意

晴子と玲奈は、中学3年生のクラスメート。もともと普通に会話する程度の仲だったけど、進路相談で同じ高校を目指していると知った瞬間、二人の関係は少し変わった。
「え、晴子も○○高校?」
「そうだよ。玲奈も?」
「まじー、ライバルじゃん!」
最初は冗談っぽく笑い合ったけど、内心ではどちらも「負けたくない」と思っていた。進学する高校のレベルは決して簡単じゃない。しかも、勉強の得意分野が正反対だったのもあって、お互いをライバル視するようになっていった。
晴子は英語が得意で模試でも高得点をとっていたけど、数学は大の苦手。一方、玲奈は数学で常にトップクラスの成績を取っていて、晴子のことを密かにライバル視していた。
「晴子って、英語楽勝そうだよね」
「玲奈こそ、数学いつもいい点取ってるじゃん。どうやって勉強してるの?」
そんな軽い会話の中から、「絶対負けたくない」という思いが強くなり、二人は自然と受験生としての「戦友」になっていった。
競争と摩擦の日々

二人はLINEで「今から勉強始めるね」とか「今終わったよ、お疲れ!」と、ちょっとした進捗報告をし合うようになった。始めるときに連絡し合うことで、サボれない環境をお互いに作り、切磋琢磨しながら勉強する日々が続いた。
けど、だんだん競争心が強くなりすぎて、ピリピリすることも増えてきた。
「玲奈、また数学で満点とかすごすぎでしょ……」
「いや、晴子の英語にはかなわないって。私、あれ本当に苦手だもん」
褒め言葉を言い合ってるつもりなのに、どこか引っかかるものがあった。晴子は「玲奈の数学の才能がうらやましい」と思う一方で、玲奈も「晴子みたいに英語が得意ならよかったのに」と、心のどこかでモヤモヤしていた。
模試の点数が発表されるたびに一喜一憂する二人。お互いに点数を聞かれるたび、「次こそ勝ちたい」と思いながらも、「友達でいたい」という気持ちもあった。だけど、言い合いになってしまうこともあった。
「そんなに数学できるなら、もっと勉強サボってくれていいのに」
「は? 晴子こそ英語楽勝なんだから、余裕でしょ?」
思わず口にしてしまった言葉に、二人ともハッとする。その場は何とか収めたものの、ちょっとした言葉が心に引っかかったままだった。
試練と葛藤の瞬間

年末が近づき、受験が迫ってきたある日、玲奈が突然LINEでメッセージを送ってきた。
「風邪ひいて、勉強どころじゃない……最悪」
晴子はそのメッセージを見て、悩んだ。自分の勉強を優先すべきか、友達として何かできることはないか。
「どうするべき?」
そう思いながらも、晴子は迷わず玲奈に電話をかけた。
「大丈夫?無理しないでよ」
「でも今サボったら、絶対追いつけなくなる気がする……」
玲奈の声は弱々しかったけど、その裏にある焦りが痛いほど伝わってきた。晴子は少し考えてから、言葉を選んだ。
「だったら、私が分かる範囲で教えるから、一緒にやろ?」
「え、本当に? でも晴子だって忙しいでしょ?」
「いいよ、お互いさまだし。英語なら得意だしね」
その日から、晴子は自分の勉強時間を少し削って玲奈のサポートを始めた。玲奈が元気を取り戻すまでの間、二人は一緒に乗り越える方法を見つけたのだ。
模試と最後の追い込み

年が明け、入試本番がいよいよ間近に迫った。最後の模試の結果が返ってきたとき、晴子は少しだけ玲奈を上回る点数を取った。
「今度は私が勝ったね!」
「やるじゃん、晴子。でも、本番で逆転するからね」
お互いに張り合いながらも、どこか楽しんでいる自分たちに気づいていた。競争するだけじゃなく、相手がいるからこそ頑張れた1年間。それが少しずつ実感として湧いてきた。
「この感じ、ちょっと楽しいかもね」
「まあね。受験終わったら思いっきり遊ぼうよ」
夜遅くまで参考書と向き合い、スタンプ一つで励まし合った日々。二人の友情は、競争心を超えて本物の絆になりつつあった。
合格発表と新たな一歩

そして、ついに合格発表の日がやってきた。駅前で待ち合わせた二人は、緊張のあまり無言で画面を確認する。
「……合格した!」
「私も! やったー!」
その瞬間、二人は手を取り合い、飛び跳ねながら喜んだ。互いに競い合い、支え合った1年間がようやく報われた瞬間だった。
「晴子がいてくれて本当によかった」
「私も玲奈のおかげで最後まで頑張れたよ」
言葉にするのは少し照れくさいけど、どちらも心の底からそう思っていた。競争心に振り回されていた日々も、今はかけがえのない思い出だ。
「ねえ、受験終わったし、帰りにカフェ寄ってこ?」
「いいね。今日は勉強のこと全部忘れて、甘いもの食べまくろう!」
そんな会話をしながら、二人は肩を並べて歩き出した。
駅前の桜のつぼみが、春の訪れを静かに告げていた。
lightmitsu著
因数分解の動画
