
「受験」と聞くと、殆んどの方が「大学受験」の方を想像されるのではないでしょうか?
私も大学受験の経験はありますが、実は私にとって受験と聞くと高校受験の思い出の方が頭に浮かびます。
今回は、私が体験した「恩師との出会い」と「高校受験」についてのお話をご紹介したいと思います。
私という人間

当時中学生だった私は、日々の大半を「ゲーム」か「部活動」を中心に時間を費やしておりました。
私が所属していた部活動は、科学部。材料を使って実験をしてみたり、時には砂糖を使ってカルメラ焼きを作ってみたり、当時の私にとって非常に楽しい部活動でした。
また、私は家に帰ったらゲームが楽しみで、宿題だけをさっとこなして、すぐゲームに打ち込んでおりました。
そんな私でしたがその時、実は塾にも通っておりました。小学校の時は通いませんでしたが、親に突然、
「小学校と中学校は全然レベルが違うから、週1でも塾に通いなさい」
そう言われて、私は中学1年生の時から塾に通うことになったのです。
今思えば、毎日ではなく週1だけで良いと言ってくれた両親に感謝をしなくてはいけないのですが、当時の私は、非常に面倒だと思っておりました。特に、私はこう思っていたのです。
(やらなくちゃいけないことはやっているのに、何で…)
宿題を全くやらない、学校にも通わない。そういった状況なら、私は自分を強制しなければなりません。しかし、寝坊もせず学校は通っているし、宿題だって終わらせてからゲームをやっている。私としては、やることはやっているのだから自由にさせてほしいという気持ちが強く心に根付いていました。
そんな中、私へある試練が訪れるのです。
塾のM先生

当時、私が中学1年生から通っていた塾で突然こんな事を言われたのです。
「君は、高校受験はするの?」
そんな質問をしてきたのは、その時にマンツーマンで私に付いていた塾講師のM先生でした。
「多分…」
そもそも私は、「受験」というものをあまり分かっておりませんでした。何となく高校生になったら何か試験を受けないと大学に行けないことは知っておりましたが、今は考える必要はないと頭の片隅で思っていたのです。そして何より、その時に面倒くさいなぁと思ったことを覚えております。そんな事を聞いてこなければ、面倒そうな試験の事について悩まなくていいと思ったからです。
「そうか…ならちょっと頑張らなきゃね」
私は、苦虫を噛み潰したような顔でこう聞き返しました。
「…高校に入るのもテストが必要なの?」
私はその時、非常に現実逃避をしたい気持ちでした。するとM先生は二ヤっと笑って、
「勿論だよ…」
と言ったのでした。私は、これからも楽しいゲームと部活動で学生生活を送るつもりでしたが、この時で「テスト、試験、受験」という現実を目の前に叩きつけられました。
といいますのも…
この話が出たのは、すでに中学2年生後半で、もうすぐ中学3年生になる時期だったからです。早い人は、中学1年生の時から準備をしているというのに。
そんな絶望に浸っている私に、M先生は、
「大丈夫、今からならまだ間に合うよ!」
そんなM先生の言葉に、私は既の所で勉強しようと思うことができたのでした。
この事も今思えば、塾に通わせてくれた両親やこの事を気付かせてくれた塾の先生に感謝すべきでしょう。当時の私には、そんな気持ちの余裕はありませんでしたが。
人生初の葛藤?

受験、試験という恐怖を背負って、私の受験への勉強は始まりました。
早速、塾でも受験専用の勉強を開始し、どの学校の受験をするのかも決めました。その学校に決めた理由は、家に近いからという事と、ちょっとした有名校で将来の役に立つという塾の先生の助言があったからでした。
しかし、その受験を決めた学校というのが、これがまた競争率が高く、私は常に不安な気持ちを背負って日々を過ごしました。
(落ちたらどうなるんだろう…)
そんな気持ちで渋々勉強していた時、ある情報を耳にします。
それは「指定校推薦」でした。
勿論狙ったわけではありませんが、一応私は「無遅刻無欠席」であり、学校の成績も平均くらいでしたので、指定校推薦は可能でした。この事は、担任と親との3者面談で話題として話が出たのです。
私は、その時ホッとしました。これも今思えば、指定校推薦であるとはいえ、まだ高校に行くことが確定したわけではないのに、私は既に受かっていた気でいたのです。
そして、ある事に気付きました。
(じゃあ、このまま普通に学校で試験だけクリアすれば、受験勉強は要らないんじゃ…)
と、そう思ったのです。
しかし、その事を塾のM先生に話すと、M先生からは意外な答えが返ってきました。
「いや、君はちゃんと勉強して試験を受けるべきだ。指定校推薦は、別に受けといてね」
M先生は真剣な面持ちではっきりと言いましたが、私はどうにもそんな気持ちになれませんでした。
「はい…」
一応返事だけはしましたが、もう既に勉強をこれ以上やる気はありませんでした。しかし、M先生は私の心を見透かしたかのように、
「ここで手は緩めないよ。さぁ、受験勉強をきちんと一通り修めよう。そしてね、これは大切なことだけど、挑戦するということは若いうちにやっておいた方がいい…」
先生にそう言われるとなかなか反抗できず、嫌々勉強をやることになりました。
(勉強をしたくないけど、しなかったら先生にバレるしなぁ…)
「勉強をする必要はもう無い」という気持ちと、「でもしないと怒られる」という気持ちが心の中で渦巻いておりました
そして、そんな中私はとうとう高校受験当日を迎えることになるのです。
これから続く道

私は当時、最後の最後まで「どうして高校受験を受けなきゃいけないのか」という気持ちを引きずっておりました。
そして、テストがスタートすると今までに感じたことの無い緊張が身体全体に走りました。一斉に全員でスタートしたはずなのに、どこか自分だけ周りから置いていかれたような気分です。そんな気持ちを抱えながら、1科目、また1科目とテスト受けました。
その結果は…
残念ながら不合格となりました。
私は、別に合格しなくても思っておりましたが、その結果を見た時にはなぜかとても悔しいと思ったことを覚えております。
その後、何とか指定校推薦には受かりましたが、私は何故か気持ちに納得がいっておりませんでした。そして、塾のM先生に試験の事を報告したのです。すると、M先生は、
「よく頑張ったね!本当によく頑張った!」
そう言ってくれたのです。
「でも先生、僕試験に落ちちゃったけど…」
私がしょげながらそう言うと、M先生は、にっこり笑ってこう言ったのです。
「今回の挑戦は、必ず次の大学受験に活かせるよ!間違いなくね!」
私はそう言われて、はっとしました。この時、また受験の話かとも思いましたが、今度思ったことはそれだけではありませんでした。
(次の試験は受かりたい…)
そんな小さくも確かに芯の通った目標が心に灯ったのです。
「君がいい加減に勉強して出た結果ならそれはその通りだが、ちゃんと勉強して出た結果なんだ。悔しいだろう?」
M先生はこうも付け加え、私は何か大切なことを教えてもらったような気がしました。
その後、私は高校生になってからは、同じM先生に勉強を教えていただくことにしました。そして、見事に大学の方は合格をすることができたのです。
高校受験の勉強が辛かったのは今でも覚えておりますが、しかし、
もし、あそこで頑張らなかったら私は「今」どうなっていたでしょうか?
それは、知る由もありませんし知りたくもありませんが、私は、とある塾の先生によって「挑戦」という大切なことを教えてもらい、挑戦から得た「経験値」を上手く活かすことができたのです。
今でも、M先生は私にとって大切な人生の先生であり、恩師でございます。
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