人生の中で、ほとんどの方が一度は経験するであろう「受験」。
受験は一体誰のためにするのでしょうか。
自分のため?親のため?
自分の進みたい道と、親が子どもに進ませたい道が異なっているとき、
あなたはどちらを優先しますか?
今まで育ててくれた親に従うのでしょうか。
それとも、
自分の意志を貫くのでしょうか。
親は覚えている
私は高校2年生の頃、進路のことで母親と喧嘩しました。
理由は私の希望する志望校と
母が私に期待する志望校が違ったからです。
自宅から通える距離にある四年制大学に進学したい私と、
幼稚園教諭を目指すことができる短大に進学させたい母。
私が子どもの頃、
「幼稚園の先生になりたい」と言っていたことを覚えていた母は、
てっきり私が短大へ進むと思っていたようです。
子どもの頃から習い続けているピアノも、
そのために今も続けていると思っているようでした。

親と私の意見の違い
私の通う高校では、3年生は進路別のクラス分けになるため、
2年生の2学期に親を含めての進路相談会があるのですが、
そこで初めて、母と私の意見が違うことに気付いたのです。
大学と短大とでは授業の進みが異なるだけでなく、
学校にかかる費用も倍近く異なるため、
意見が食い違ったまま進路を決めることはできません。
しかし、家に帰宅してから母との話し合いを重ねても、
話は一向にまとまらないのです。
なぜなら、
私自身が大学に通いたい理由がはっきりとしていないからです。
確かに幼稚園の先生になりたいと思ったことはありましたが、
それは中学の頃までの話。
今は一切そう思っていないのです。
しかし、だからといってなぜ大学に通いたいのかと問われると答えに困るのです。
特に学びたい分野があるわけでも、なりたい職業があるわけでもありません。
ただ、もう興味のない幼稚園教諭をめざすことはできない。
大学に通いながら自分の将来について考えたい。
これが本音でした。
そんな私を母は受け入れず、頑なに短大を進めるのです。
「資格を取っておけば、何かあった時に便利だから…」と。
今思えば、あの時の母の気持ちは当然だと理解できるのですが、
当時の私は全く聞く耳を持たず、理解ができませんでした。
そんな母と私の話を聞き、助け船を出してくれたのは、二人の兄でした。

人生で初めての自分自身との勝負
私は三人兄妹の末っ子で、双子の兄がいます。
兄たちは、現在大学四年生。
来春からの就職も内定が決まっており、
現在は最後の学生生活を謳歌しているタイミングでした。
父を早くに亡くしてからは、母が一人で私たちを育ててくれ、
兄たちは私の父親代わりも務めてくれました。
そんな兄が言うのです。
「大学に行きたいなら行けばいい。学費も心配する必要はないし応援する。
でも、“明青立法中(MARCH)以上じゃないと認めない”」
今の私の学力では正直、厳しい状況でした。
けれど、大学に進むためには
この条件をのむしかないと思った私は、受け入れたのです。
この日から私の生活は一気に受験モードに切り替わりました。

家族の支え
学校の時間以外は、すべて勉強に励みました。
塾に通いませんでしたが、
幸い、兄二人は私よりも優秀で、現役でMARCH以上の大学に通っていたので、
二人が代わる代わる勉強をみてくれました。
母は勉強には一切口を出さないものの、
健康管理のため、栄養がたっぷり入った美味しい食事を
毎日用意してくれました。
3年生になり、
現在の自分の学力を知るため、模試を受けました。
結果は惨敗。
志望校はほとんどがC判定という厳しい状況。
このまま勉強して大学に合格することはできるのか不安になりましたが、
この模試の結果を見て、兄が志望校を1校に絞ろうと提案してきました。
今までは、条件に出された大学であればどこでもよいと思い勉強していましたが、
これからは1校に絞り、
その大学の試験傾向に合わせた勉強をしようというのです。
今の状況でも不安なのに、
1校に絞るのはさらに不安が募りましたが、
私は兄の提案に受け入れることにしました。

やるしかない状況を作る
志望校を1校に絞ると同時に、万が一不合格になった時のことも決めました。
それは、半期遅れでもいいから専門学校へ通うこと。
母の希望する短大ではありませんが、
幼稚園教諭が目指せる専門学校へ入り、資格を取るという決め事です。
資格を取ったあと、
就職するかは改めて考えればよいということでした。
自分の希望通りに受験をしてだめな時は、
母の希望に応えるというのが条件として加わったのです。
”こんな条件を追加するなんてひどい。
何としてでも合格しなければ!”
と改めて思い直したことを覚えています。
今思うとこの条件は
受験が厳しいとわかった私に「もしだめでも大丈夫だよ」という、
兄なりの優しさだったのかもしれません。

家族の支えに対する答え
二人の兄との厳しい受験勉強をやりきった私は、
無事に兄の出した条件をクリアし、志望大学に合格しました。
一人では決して掴むことのできなかった合格です。
もちろん合格を一番に伝えたのは母でした。
進路のことで喧嘩をしてからも、
普段の生活や食事でサポートしてくれていた母。
お互い言葉には出しませんが、
何か小さなわだかまりがあったように感じていました。
しかし、
合格発表の日電話で結果を伝えた母は
「よく頑張ったね」と褒めてくれました。
この一言で、今まで胸につっかえていたものがなくなり、
とてもスッキリした気分になりました。

受験は家族の力があってこそ
乗り切れる出来事だと改めて感じました。
母の意見に従わず、自分の意志を貫き通した私ですが、
結果を出すことで母もきちんと認めてくれ、
今では、今まで以上に良い関係を築けています。
N665rtf著
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