好奇心旺盛な小学生時代

これは私が小学生の頃、中学受験を勧められた時の話です。
小学生時代の私は何にでも興味を示す好奇心旺盛な子供でした。
家の本棚は花や動物、恐竜や宇宙の図鑑でびっしり!暇さえあればずっと家で読んでいるようなタイプでした。
そんな私は周りの大人も驚くくらい勉強は大好き。
自分の知らないことが分かっていく感覚がとても楽しくて、親や先生に「勉強しなさい!」なんて言われる前から自主的に勉強していました。
三者面談

五年生になった頃のことです。
学年最初の三者面談で、私は担任からこんなことを言われました。
「私立中学への受験を考えられていますか?」
私は私立受験のことは一度も考えたことはありません。
家のすぐ近くに通う予定の公立中学校があったので、登校時間が短くて済むからラッキー!くらいにしか思ってませんでした。
「これは私からは言いにくいのですが、ここの公立中学校はその……あまり治安のいい学校ではないので、○○さんみたいに、勉強が得意な子には私立受験をお勧めしているんです。」
担任の言う通り、確かに私が通う予定の公立中学校はあまり評判がいい中学校ではありませんでした。
しかし当時の私にとってそんなことはどうでもよく、ただ当たり前のように近所の中学校に通うことになるとしか思っていませんでした。
面談も終わりその日の夜、両親と私は食事中に進路について話し合いました。
「私立行きたい?」
「うーん、わかんない。」
正直私立のことを一度も考えたことのなかった私には、いきなりすぎて決められない話でした。
「塾に通わせた方がいいのかな。」
「近くの△塾に電話してみましょうか。」
塾に通うも……

私が迷っている間も両親は着々と話を進め、その結果塾に通うことになった私。
近所でも合格実績があるという進学塾に親が電話をし、すぐに面談する形になりました。
親に連れられその塾に行くと、スーツをばっちり決めた強面のおじさんが待っていました。
その方は塾長で、どういう方針で指導しているか、授業風景はどんな感じかなどを説明してくれました。
私はこの時点ですでに嫌な感じがしていました。
すごく前のめりで必死に語る強面の塾長や、説明を受けている間に隣の教室からたまに聞こえる講師と思われる人の怒鳴り声。
当時小学五年生の子供だった私にとって、それは恐怖でしかありませんでした。
しかし私の思いとは裏腹に母親は入塾の手続きを進め、結局私はその塾で学ぶことになってしまいました。

初めて塾で授業を受ける日。
学校の教科書の倍はありそうな分厚い教科書を何冊も持って教室に案内される私。
私が授業を受けることになったクラスは、私立受験する子たちだけが集まったクラスでした。
「これから一緒に勉強することになった○○さんです。みんな、仲良くしてやってな!」
それまでワイワイ賑わっていたクラスがシンと静まり返ったのがわかりました。
(どこの学校の子?)
(知らない。)
コソコソと話してる女の子たちの声がチラッと聞こえました。
その時私は、学校でも感じたことがないくらいの居心地の悪さを感じていました。
そのクラスには誰も同じ学校の子がおらず、クラス内の生徒たちは学校別でグループになっている様子。
当然私が入れるグループなんてありませんでした。
席に着き授業が始まると、担当の若い先生がいきなり教室中響き渡る大声でクラスに活を入れました。
ただでさえ馴染めなそうにないクラスに不安でいっぱいな私。
そこに突然響き渡る大声。
私のストレスは一瞬にして最高潮に達しました。
(早く帰りたいなぁ……。)
塾初日から居心地の悪い嫌な思いしかしなかった私。
せっかく私立受験のために入塾しましたが、そんなストレスフルな環境で私はとても勉強する気にはなれませんでした。
次第に、今まで“自主的に”家で勉強していた時間も、塾の宿題という“強制された”勉強の時間へと置き換わり、みるみる勉強嫌いになっていきました。
当然学校の成績が上がるわけもなく、塾に通う前まではどの教科も90点以上は取れていたものが、半年もする頃には70点60点と目に見えて下がってしまいました。
自分に合った道は……。

「もう私立なんてどうでもいい!!塾なんて行かない!!」
とうとう限界に来てしまった私はある日、親に自分の気持ちをぶちまけてしまいました。
それを聞いた母親は最初、今までにないくらい私を怒りました。
高い塾代を払っているので怒るのは当然だと思います。
しかし私も、自分の思うように勉強ができないストレスを溜めるのはこれ以上できなかったのです。
最初は怒鳴りつけてくるだけだった母親も、私の大泣きしながら必死に訴える姿を見て諦めたのか、次第に「そうか、分かった」と塾を辞めることに同意してくれました。
塾を辞めてからは嘘のように成績もV字回復!
事情を知らなかった担任も「いったい今まで何があったんだ?」と驚いていました。
結局私立中学を受験することはなく、近くの公立中学に行くことになった私。
私は全くといっていいほど後悔はありません。
誰かに強制されて何かをするよりも、自分の好きなペースで伸び伸び進めていく方が、私の性には合っていたようです。
odagiri著
因数分解の動画