私の友人である加奈は、男子の多い工業高校へ進学し自分の夢を叶えました。
これは加奈が工業高校へ進む道を選んだ理由、そしてある出来事を乗り越えて自分の中で決心を固め夢を実現させたお話です。
おばあちゃん思い

加奈は幼少期から近所でも有名なおばあちゃんっ子。
両親が共働きだったため、身の回りの世話はほとんどおばあちゃんがやってくれていました。
加奈のおばあちゃんは人との交流が広い人。
学校から帰ると、家の縁側に座ってお茶を楽しむおばあちゃんと近所のお友達が、
「おかえりー、学校楽しかったかー?」
と毎日声をかけてくれていました。
加奈はそんなおばあちゃんたちに学校での出来事を話すのが好きでした。
学校で起きた楽しかったこと、勉強が難しかったこと、毎日話しても話し足りないくらいいろんなことが起こる小学校での生活を、おばあちゃんたちは懐かしがるように聞いてくれました。
しかしいつも返ってくるのは、
「昔は私も加奈ちゃんみたいに元気だったんだけどねぇ、今は足も腰もよう動かん。階段だけでも息切れするわ(笑)」
という言葉。
小学生の加奈には、おばあちゃんたちの言う感覚がよくわかりません。
しかし、よく小さな段差でも躓いて怪我をするおばあちゃんを心配に思っていました。
加奈の家は昔ながらの古い日本家屋だったため大きな段差も多く、辛そうに家を行ったり来たりしているおばあちゃんを見て加奈は、
「段差とかなかったら、ばあちゃん怪我しなくていいのになー。」
と考えるようになりました。
そんなこともあってなのか、学校の休み時間には自由帳に理想の家の絵を描いたり、夏の貯金箱コンテストではまるでドールハウスみたいな綺麗な貯金箱を作って入賞していました。
工業高校へ

中学に入ると、加奈のその願いはより強いものになっていました。
家を作る……建築士になるにはどうしたらいいのだろう?
加奈は自分でその方法を調べ、工業高校に行けば資格を取れるらしいということが分かりました。
道が分かれば後は進むのみ!
加奈は日々の授業をしっかり聞いて、志望の高校を目指しました。
先生との二者面談。
どんな進路を考えているか聞かれたので、加奈は正直に工業高校に行きたいまでを伝えました。
すると先生は驚いた顔で、
「工業高校は男の子ばっかりだよ?女の子は大変だよ?」
と言ってきたのです。
そのことを知らなかった加奈は不安に駆られました。
「進路はよく考えなさい。」
と最後に念押しされて、加奈は自分の夢は間違っているのかと悩みました。
女は工業高校を目指してはいけないんだろうか、建築士は男の仕事なのだろうか。
加奈はその悩みをおばあちゃんに相談しました。
建築士になりたいとは言いませんでしたが、工業高校に行きたいまでを言うとおばあちゃんは、
「昔は男の子ばっかりだったけど、今は女の子も活躍する時代でしょ?自分で選んだんだったら胸張っていきな!」
と応援してくれました。
おばあちゃんの言葉で勇気づけられた加奈。
自分の夢に性別なんて関係ない!
何があってもおばあちゃんは私の味方!
そんなおばあちゃんのために私は頑張るんだ!
加奈は周りになんと言われようが、自分で進むと決めた道、工業高校へ行って建築士として活躍する夢を捨てませんでした。
そして努力の甲斐もあり、加奈は工業高校へ進むことができました。
そこは周りの言った通り男の子がほとんど。女の子は加奈を含めて二人しかいません。
しかし周りが言うほど大変というわけでもなく、むしろ男女分け隔てなく接してもらえる点は、加奈にとって本当に気楽に感じていました。
間に合わなかった夢

工業高校に入学し、喜びも束の間。加奈に辛い出来事が起こってしまいました。
いつもそばで応援してくれていたおばあちゃんが、学校から帰ると玄関先で倒れていたのです。
加奈は大慌てで救急車を呼びましたが、そのままおばあちゃんが帰ってくることはありませんでした。
おばあちゃんは玄関先で育てている花に水をやるのを日課にしていました。
その時に扉の出っ張りに足を引っかけ転んでしまったそうです。
(おばあちゃんのおかげでここまで頑張れたのに、どうしてこんなことになってしまったの?)
いつも心配していたことが現実に起こってしまい、何もできなかった悔しさでしばらく立ち直れなかった加奈。
しかし落ち込む加奈を支えたのは家族でした。
「ばあちゃんのために頑張ってるんでしょ?ばあちゃんは加奈が建築士になるってすごく楽しみにしてたんよ!ちゃんと叶えないとね!」
あまり周りにベラベラ自分のことを話すタイプじゃなかった加奈ですが、家族は皆知っていて応援していたみたいです。
特におばあちゃんは、近所の友達にも自慢するほど楽しみだと言っていたそうです。
それを知った加奈は、悲しんでなんていられない!天国のばあちゃんの期待に応えるんだ!と悲しみを乗り越え、無事に高校も卒業し建築士としての道を歩み続けました。
建築士として

現在加奈は1級建築士の資格を取るため、長い実務経験を積み勉強をしている最中。
ゆくゆくは公共施設の建設も目標に、より多くの人のためになる設計に携わりたいそうです。
まだ女性の少ない業種のようですが、周りに負けずに働く彼女の様子は、誰にも負けない強さを感じました。
odagiri著
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