
僕には秋という1つ上の
兄が一人います
兄は運動も勉強も
器用に何でも出来る人で
幼い頃は兄の背中を追いかけ
外を走り回っていました
気弱で体も弱かった私は
近所の虐めっ子にいつも
虐められていました
”おい!やめろー!
夏をいじめるな!”
といつも体をはって私を
守ってくれる兄が私は
大好きでした
大きくなるにつれ兄との
関わりは少なくなり
兄が中学になると
ほとんど話すことは
なくなりました
兄が中学2年の夏
珍しく私の部屋にきたのです
”元気?最近話してなかったから
来てみた。彼女できた?”
”は?そんなんいないから
なんだよ、そんな話しに来たのかよ”
久しぶりに兄と話が出来
嬉しいのに突き返すような
話し方しかできなかった
兄の様子は少し元気が
ないように見えた
”何だ残念。できたら俺に
教えてね。楽しみにしてる”
そんななんもないような
話をすると兄は出ていった
久しぶりの兄はずいぶん
大人に感じた

”すぐに病院にこい!!”
突然の父からの電話
何が何だかわからず
言われた病院まで
急いで向かいました
病院に着くと
そこには母が泣き
崩れ父は母の肩抱き締め
父も泣いています
”父さん!何があったの!”
父が私の声に振り返り
”秋が、、、
学校の屋上から飛び降りたって”
消えそうな声で話
続けました
”秋、さっきまで夏の事
呼んでたんだ。でももう、、、”
その後は涙で話せなかった
病室に入ると
ベッドで寝ている兄
”秋兄!来たよ呼んだんだろ
急いできたんだからさ
何か言ってよ、、、
彼女はまだ出来てないけど”
触れた手は冷たく
私の心も凍りつきそう
なぐらい
それから時間が止まってしまった
なのもかもが変わった
母は部屋から出てこない
父は話さなくなった
私は家に帰らなくなった

”秋の弟?”
いつもの溜まり場で
見慣れない人に声を
かけられた
”俺山田、秋と部活が一緒だったんだ
秋の事で話があるんだ。
少しいい?”
公園のベンチに腰掛け
コーラを渡しながら
山田さんは言った
”秋、、、
部活で虐めを受けてたんだ
ずっと伝えたくて、秋を
守ってあげられなかった自分が
許せなくて、、、。ごめん、、、。
秋がさ、、、。夢ん中出てきて
あいつ笑ってたんだ、、、。
あいつの笑顔久しぶりで
伝えなきゃって思ったんだ”
最初何をいっているのか
理解ができなかったが
山田さんは虐めの発端や
虐めていたやつの名前を
教えてくれた
”父さん!!秋兄虐められてたって!!”
家の中に駆け込み
叫ぶように言っていた
自殺当初虐めを指摘したが
学校側は虐めの事実は
なかったと言って相手にも
しなかったそうだ
虐めの主犯は部活のコーチ
兄はコーチの日々のいきすぎた
体罰に意見し虐めを受ける
事になったと
父は学校とコーチを訴えた

”秋兄、、、”
兄の部屋に久しぶりに入った
そこには秋兄の面影が
まだあった
机の上に参考書とノート
ふとノートに目をやると
教師になる
と殴り書きのような字で
書いてあった
兄の夢
今はもう叶わない
きっとなれていた
素晴らしい教師に
悔しい、、、
”秋兄、、、悔しいよ”
中三夏
兄の一周忌
兄の部屋で家族皆で
兄の話をした
”俺、、、
秋兄みたいにはなれない
けど、教師になろうと思う”
そう言った俺の顔を
見ながら父と母は泣いていた
そして兄の笑った声が
聞こえていた

教師になることを決め
受験勉強が始まった
それまで全然勉強なんて
していなかった自分
その自分に嫌気がさした
”今の成績では志望校
難しいかもな、、、。”
担任のその一言で
家庭教師が付くことに
嫌々面談を受けることに
”こんにちは!”
その声に顔を上げると
そこには山田さんが立っていた
”夏くんの家庭教師を
担当します。山田です
ビックリした?俺もビックリ”
満面の笑顔の山田さんが
何だか秋兄に見えた
きっと秋兄が会わせたんだって
地元の大学に山田さんの
おかげでギリギリ合格でき
夢まであと一歩
秋兄といっしょに叶えたい
toron著
因数分解の動画