国立大学を目指した話し

農学部?医学部?親への反抗心で揺れる進路選択。

農家の後継ぎ

大きな農家の長男として生まれた和真。

祖父母の初孫だったため、それは愛情深く育てられました。

将来はこの農家を引き継ぐ跡取りとして、周りからの期待も絶大。

和真はまだ歩けるようになる前から、その頃現役で農業に勤しんでいた祖父の運転するトラクターに乗せてもらい、作物を育てる楽しさや乗り物の楽しさを間近で教えてもらっていました。

周りから愛情深く育てられた和真は、どの分野においても成績優秀。

学校の勉強は“神童”と呼ばれるほど優秀で、ミスをしたことがないんじゃないかと言われるくらいいつも100点ばかり。

クラスメイトや先生からも、

「こんなに頭が良いなら、将来はお医者さんだね!」

なんて言われていました。

将来は医学部?

中学生になり少しずつ将来について考え始める頃になると、和真は農家を継ぐことではなく医学部へ進むことを考え始めます。

正直、和真は医学の道にそこまで興味があったわけではありませんでした。

小さい頃から神童と呼ばれ、周りから医者になれると言われてきたから……。

中学という小さなコミュニティから出たことのなかった和真の考えが偏(かたよ)るのは当然だったのかもしれません。

 

そして何より一番の要因となったのは、父親との不仲。

周りが勉強ができることを褒めてくれていた一方、父親だけは、

「勉強だけじゃ飯は食えん!体を動かせ!」

と、和真を褒めてくれることはありませんでした。

 

そんな父親への反抗心もあり、和真の中にあった農業に携わるという選択肢はゆっくりと消えようとしていました。

しかし、一つだけ和真の心をつなぎとめるものがありました。

それは祖父母の存在。

いつも100点のテストを見せると大喜びして、その度にご馳走を作ってくれる祖母。

休みの日にはトラクターに乗せてもらい、農業の楽しさを教えてくれる祖父。

そんな祖父母を裏切るような気がして、完全に農業を選択肢から消すことはできていませんでした。

家族の応援

高校は県トップの進学校に入学した和真。

クラスメイト達も皆頭がよく、中には和真と同じ医学部へ進学志望している生徒もおり、同じ目標へ向けて励まし合いながら日々努力をしていました。

その努力を応援してくれていた家族。

祖母は、

「本当は家業を継いでほしかったけど、和ちゃんのやりたいようにやりなさい。」

と、医学部へ進みたいことを否定はしませんでした。

そして祖父も、

「一族から医者がでたら鼻高々だ(笑)」

と、和真のことを全面的に応援してくれました。

そんな手厚い応援の中、和真は医学部へ向けて毎日ほとんどの時間を勉強に当てる生活を送っていました。

分厚い参考書や大学の赤本に囲まれながら勉強している和真に、母親と祖母は毎日差し入れをしてくれて、和真自身も期待に応えようと必死に勉強しました。

 

三年生になり、いよいよ志望大学を決める頃。

和真は県外にある国立大学医学部を志望しました。

今まで県外に出たことのなかった和真。

受験当日何かあっては大変だと、母親が和真の受験について行くことになりました。

とはいっても母親も県外には出たことはありません。

「スーツってなんか息苦しいね(笑)」

田舎のデパートで大奮発して買ったのであろう綺麗なスーツは、いつも農作業姿しか見せたことのなかった母親には不釣り合いでした。

心変わり

いよいよ受験の日。

空港に向かうため、家の近くのバス停に母親と二人で歩く和真。

一時間に一本しか来ないバス。遅刻してはいけないからと40分も早めにバス停に到着します。

長い沈黙、和真は緊張と不安で頭がグチャグチャになりそうな気分でした。

「ねえ母ちゃん。」

「なあに?」

「俺が農業継がなかったらどうなるの?」

「うーん、お父さんの代で終わっちゃうね。」

「やっぱり継いでほしい?」

「そりゃあ、何代も続いてきた家業だからねぇ。」

心の隅にあった、農業を継がないといけないというモヤモヤが一気に和真の脳裏によぎってきます。

小さい頃から農業の楽しさを教えてくれた祖父母の笑顔がふと頭をよぎった時、和真はスタっとベンチから立ち上がりました。

「俺やっぱり医学部いくのやめる。農業継がなきゃ。」

 

それは突然の心変わりでした。

和真の言葉を聞いた母親は怒るどころか、

「よかった……よかった……。」

と涙を流しながらギュッと和真を抱きしめていました。

 

バスに乗っている予定の時間に家に帰ってきた和真たちを見て家族は驚きました。

「和ちゃんが農業継いでくれるって!!」

母親の言葉で、家族たちは喜び半分戸惑い半分でした。

「でも、せっかく頑張ったのに医学部はいいのか?」

「うん。みんなと一緒がいい。」

和真はその時やっと農業を継ぐことの決心がついたようです。

 

その後、和真は同県の国立大学農学部へ進学しました。

そして今は家業である農業の傍ら、若い世代に農業の楽しさを広げる取り組みに尽力しています。

kikslgie著

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