専門学校へ進んだ話し

教師にはなりたくない!!周りが勧める道と私の選んだ道。

教師一家

これは私の学生時代のお話です。

私の家系の多くは教師をしています。

両親も祖父母も叔父叔母も、少し年の離れたいとこのお兄ちゃんお姉ちゃんまでみんな教師でした。

そんな家系だからか、私は小学生の頃から、

「将来の夢は?」

と誰かに聞かれると、

「学校の先生になる!」

と、何の迷いもなく答えていました。

それが本心だったかははっきりと覚えていません。

きっと周りの大人が皆そうだったから、それ以外の道を知らなかっただけだったと思います。

もちろん、そんな私の将来の夢を否定する大人は周りに誰もいませんでした。

むしろ私が教師になることを歓迎するような……というよりは教師になるのは当然といった扱いを受けていました。

私に対するそんな扱いに、私自身疑問を抱くことはありませんでした。

高校に入学するまでは……。

寂しい入学式

私は親が勧める地元で有名な進学校へ入学しました。

私はその学校に入るために中学時代はほとんど遊びもせず、ひたすら家で勉強する日々でした。

たまに友人達からは、

「親が先生なら勉強教えてもらえばいいじゃん!」

なんて言われましたが、親から勉強を教えてもらったことは一切ありません。

あくまで仕事で教えているだけなので、家に帰ってまで勉強を教えたくないと疲れた様子で言われた覚えがあります。

そうして一人黙々と勉強し合格した高校でしたが、もちろん親が入学式に来ることもありません。

教師にとって自分の子供のことより、自分の勤める学校の行事が最優先。

今まで入学式卒業式、体育祭などの学校行事も来てもらったことはありません。

私もそれは仕方ないことだと自分に言い聞かせていました。

しかし、親と嬉しそうに笑う他の生徒たちを見ていると、どうしても羨ましいなぁという気持ちが沸き上がってしまうのでした。

圧力

私の家族や親戚が全員で集まれるのは年一回。お正月の時だけでした。

小学生や中学生の頃は「お年玉がもらえるー!」と意気揚々と祖父母の家へ行ったものです。

もちろん、その当時まだ学生だったいとこのお兄ちゃんお姉ちゃんと久々に遊べるのも楽しみでしたが(笑)

しかし、私が高校に入ってからはそんな感情は起きませんでした。

「もう高校生かー!行きたい大学は決まったか?お前はどんな先生になるか楽しみだなー!」

何の悪気もないんだろうけど、親戚たちは私が教師になること前提で話をしてきました。

教師特有なのか妙に説教臭いし、朝礼での校長先生のありがたーい言葉を延々聞かされているような退屈な時間。

私はそれをただ苦笑いして聞くしかありませんでした。

 

ふと他の場所に目を向けると、いとこのお兄ちゃんが私と同じように別の親戚に声をかけられていました。

いとこのお兄ちゃんは高校の教師を務めて数年経ち、昨年初めて担任としてクラスを受け持つようになっていました。

しかし、初めてのことだらけで上手くいかないことも多く、若い故に生徒達から舐められたり、自分より年上の教育熱心な親達の無理な要求がよくあるようで、話を聞いていると正直あまり楽しくなさそうだなぁという印象を受けました。

 

この話を聞いた頃からでした。

私は本当に自分が教師になりたいのか、わからなくなってしまったのです。

かと言って、他に何かやりたいことがあるわけでもありません。

ましてや、周りからこんなに教師になるよう圧力をかけられては、誰にも相談できません。

私は一人で自分の進路について悩むようになりました。

自分の決めた道

学校の帰り、私はまっすぐ家に帰らず一人で街を歩くのが日課になっていました。

ある日、ふと立ち寄ったペットショップがありました。

中に入ると、可愛い動物たちがいっぱい出迎えてくれます。

周りを見渡すと、ちょうどトリマーさんから綺麗にシャンプーカットしてもらった可愛い犬が、飼い主さんの腕の中ではしゃいでいるのが見えました。

飼い主さんの「ありがとうございます!」という嬉しそうな声。トリマーさんの達成感溢れる笑顔。

私はそれを見た瞬間、自分もこんなところで働きたいと強く思いました。

しかし、

(親に相談したって乗ってくれるわけない……。)

と思い、最初から相談しようという気はありませんでした。

それでも私は憧れの場所を見ていたくて、しばらくペットショップへ通う日々が続きました。

 

ところがある日、私は両親にリビングに呼ばれます。

「何か悩んでるでしょ?話してくれるか?」

父親にそう言われて私は驚きました。

なんで私の気持ちがバレているんだろう?

いつも私のことなんか見てないと思ってた……。

私は意を決して二人に悩んでいることをぶつけました。

「私、教師にはなりたくない。ペットトリマーになりたいと思ってる。」

両親はしばらく黙った後、母親が私を抱きしめ、父親は頭をなでてくれました。

「ごめんね。今まで私たちが苦しめてたんだね。お母さんたちは、どんなことがあってもあなたの進む道を応援するから!」

私の目からは自然と涙が溢れていました。

初めて両親を、“教師”としてではなく“親”として感じた瞬間でした。

 

それから私は、動物専門学校へ進学しました。

その入学式へは、定年を迎えた祖父母が私を祝いに来てくれました。

動物の命を扱う仕事。

大変なことや辛いことも多いけれど、自分で選んだ道。

悔いのないように精一杯頑張っています。

tanuki著

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