春になると、毎年思いを巡らせることがあります。
もしタイムマシンがあったなら、戻れるものならあの時に戻りたい。そして、もう一度勉強して違う道を選べたなら、今と違った未来が待っていたのかもしれないと。

1.なぜそこを選んだの?

桜の咲く少し肌寒い中、新しい高校の入学式。新しい制服に袖を通し少しのドキドキを抱えながら、ちょっとだけ人見知りの自分が、教室に入っていく。先生はどんなひと?新しい友達はできるかな?そんな思いがある中、新しい高校生活は始まりました。
高校生活が始まると、新しくできた友だちと毎日おしゃべりしながら楽しい高校生活が続いていくものと思っていました。でも、授業となるとそれはだんだんと違ってきて、驚きと少しの後悔が、だんだんと増えていくようになりました。知っている事ばかりの授業内容、簡単に解けてしまう数学の問題、毎日が中学の復習のような日々。なんでみんな、こんなことわからないんだろう・・・そんな風に感じながら不安な毎日が続いていきました。
私は、中学時代水泳部で毎日練習に励み、そのせいか試験勉強はおろかテスト勉強さえしない生徒でした。小さいころから勉強しない割に成績が良く、両親にも勉強のことは一度も言われたことがなかったので「勉強をする」という概念がありませんでした。テスト期間中でも部活をがんばり続けた私は、中3で部活を引退したころには成績は中の下ランクに落ち、志望校の選択に悩むようになりました。
2.将来への甘い考え、そして苦しんだ自分

でも勉強だけがすべてじゃない、ランクの高い高校でも低い高校でも、自分ががんばれば将来はきっと大丈夫、そんな風に自分を安心させ、目標に向かって頑張ることをやめ、安易な道に進むことを考えていました。さすがに先生や両親、友だちは心配していましたが、『自分は大丈夫』となぜか根拠のない自信を抱いていました。面倒くさがりの自分は行きたかった高校をあきらめ、近くの女子高を進学先に選び高校に入学することとなるのです。でもそんな私に待ち受けていたものは、そんなに甘いものじゃない未来でした。
ランクの低い高校に入学して、一番困ったのは自分のやりたいことができたときでした。今までの基礎学習ができていない分、勉強にはとても時間がかかりました。英単語一つとっても辞書を引きながらの勉強となり、本当に苦戦してました。要領を得ない学習方法、時間ばかりが過ぎていき、苦痛しか伴わない勉強時間・・・。高校の補習事業を自ら願い出て、先生とマンツーマンで勉強しました。ランクの低い学校でしたから、使っているテキストは簡単なもので、レベル感がわからず先生も困惑していたのかもしれません。とにかく模試を受け、自分のレベルを確認しながら、足りないところを勉強していく、まさしくオリジナル学習法でした。進学校に行った友人たちは大学受験の勉強も当たり前のように進んでいる。そんな劣等感とともに、とにかく勉強あるのみでした。効果的な学習からの検収さえもできていないのに。
そして受験シーズンとなり、まわりとはかなり違う受験(だったと思う)で出た結果は、補欠合格。嬉しいと言えば嬉しいが、何とも言えない感情が湧いてきた。高校進学で出したでたらめな自分の選択が、3年間という貴重な時間をどう変えたのか、良かったのか悪かったのか、今でも答えは出ていません。
3.受験は人生の初めての選択。だからこそ将来を左右してしまうかもしれない

勉強という、将来自分の財産になるべきものの価値がわからず逃げることを選んだ私。それは人生のすべてに影響しているような気がします。嫌なことから逃げ、楽なことを優先して満足する。受験勉強は単に学校を選ぶためのものではなく、自分の人生の選択肢なのだと思います。そしてそこを見事クリアすればもっと多くの選択肢があって、輝かしい未来があったのかもしれないことを、今この年になって感じています。人生の中で初めて経験する葛藤と努力の長い日々は、ある意味将来の自分の基本形なのかもしれません。そしてこれからの人生の築き方を学ぶ、大切な時間であったことも間違いありません。
もしタイムマシンがあったなら、受験前の自分にそう言ってあげたいと、この時期の桜をみると思い出す、貴重な体験です。
kawasaki著
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